VRの仕組みとビジネスの最前線


日付: 2020-05-23 閲覧数: 534



「VR」は「Virtual Reality」の略語で、日本では「仮想現実」「人工現実」と訳される。人間の五感に働きかけることで、実際には存在しないモノや空間を「現実」だと感じさせるための技術やシステムのことを指す。


VRの用途


VRを利用することで、宇宙空間や深海、危険を伴う戦場など、一般の人が行くことが出来ない場所を、まるで自分がその場所にいるかの様な体験が可能となる。また、スポーツや音楽ライブといったその場にいなければ感じることができない臨場感を、家にいながらにして感じることができる。


VRの技術自体は昔からアカデミックな研究はされていたが、一般の人が身近に感じられるようなものではなかった。しかし、最近になって複数のメーカーから発売されたヘッドマウントディスプレイ(HMD)という専用のゴーグルの登場により、現在、急激な盛り上がりを見せている。


現時点ではまだ映画やゲームなどのエンターテイメント分野での利用が中心だが、今後は様々なビジネスシーンでの応用を見据えて研究が進めてられており、さらなる発展が期待されている。


VRの仕組み


人間の「視覚認識」は、左右の目に入る光の情報を「脳で処理」することで行われている。そのため、左右の目それぞれに、「微妙にズラした2枚の画像」を別々に用意することで、「脳」に距離感を錯覚させることができる。これが、「3D映像」の基本である「立体視」である。こうした立体視を実現するため、HMDには、左右の目それぞれに別々の画像を映し出すためのディスプレイが2枚搭載されている。


この2枚のディスプレイは、間に「仕切り」を立てることで左右の映像を明確に切り分けている。またスマートフォンを利用するVR製品では、画面を「2分割」することで、2枚の画像を表示しています。次に、HMDでは、周囲の現実を遮断して映像のみを見せるために両目全体を覆う構造となっている。最後に、立体視による虚像までの距離感を錯覚させるために、ディスプレイと目の間に凸レンズを設置している。


そのほか、Oculus社が発売したハイエンドモデルである「Oculus Rift」では、頭部を動かした際に映像を追随させるジャイロセンサーや、ユーザーの動きを捉えるモーショントラッキングのための赤外線センサーなどが搭載されている。これらのセンサーによってユーザーの動きをVRの世界に再現し、インタラクティブ性を高めることで、より強い没入感を実現している。


VRの画期的な5つの用途


1.軍隊におけるVRの活用


バーチャルリアリティは極めて幅広い領域のシミュレーションの実施を可能にするため、英国と米国の軍隊はいずれもトレーニングにVRを採用している。VRは軍隊のあらゆる職種、すなわち陸軍、海軍、空軍、沿岸警備隊で利用されている。


初期の段階から技術が採用され、子供たちがビデオゲームやコンピューターに馴染んでいる世界では、VRはトレーニングの効果的な方法であることは実証済みである。VRではトレーニングの目的範囲に合わせて、訓練兵を様々な状況、場所、環境に置くことができる。


軍隊ではフライトシミュレーション、戦闘シミュレーション、衛生兵トレーニング、車両シミュレーション、バーチャル新兵訓練所、その他の分野でVRが用いられている。


VRによって視覚と聴覚に基づく実体験同様の体験ができ、戦えるようになるまで兵士をリスクにさらすことなく準備を整えさせ、トレーニングするための危険な訓練状況を安全に模擬的に作りだすことができる。同様に、派兵されたときの現地の民間人あるいは海外の兵士とのコミュニケーション等のソフトスキルを兵士に指導するためにも使用することができる。


この他の例としては、戦闘から戻り、通常の生活への適応に支援が必要な兵士の心的外傷後ストレス(PTSD)の治療が挙げられる。この用途はバーチャルリアリティ曝露療法(VRET)と呼ばれる。軍隊でバーチャルリアリティ技術を利用することで得られる重要なメリットはトレーニング・コストの低減である。


2.スポーツ分野におけるVRの活用


バーチャルリアリティでは特定の状況を繰り返し見て経験し、その都度改善することが可能なため、スポーツの種類を問わず、より効果的なトレーニングのためにコーチや選手が用いることができる。


基本的に、VRは運動能力の測定や、技量の分析を手助けするトレーニング支援として用いられる。VRを用いてアスリートは試合のシナリオをバーチャルに体験することができるため、負傷時のアスリートの認知能力の向上にも用いることができる。


同様に、VRはスポーツイベントの観戦体験を向上するためにも利用されてきた。誰でも世界のどこからでもあらゆるスポーツに「観戦参加」できるよう、放送局は現在、バーチャルリアリティでライブゲームをストリーム配信し、来るべき日にライブゲームのバーチャルチケットを販売する準備をしている。


3.メンタルヘルス分野におけるVRの活用


先に簡単に触れたように、VR技術は心的外傷後ストレスの主要な治療法となっている。VR曝露療法を用いて、患者は心的外傷を受けた状況の再現を体験し、その状況で上手く折り合いを付けることで治癒させようとする試みである。同様に、不安症、恐怖症、鬱等の治療にもVRは用いられている。


例えば、一部の不安症の患者にとって、VRを使用した瞑想がストレス反応をコントロールし、対処メカニズムを向上させるための効果的な方法となっている。バーチャルリアリティ技術は、患者を管理された安全な環境に置きながら、恐れを感じる対象と接触する安全な環境を提供することができる。これこそバーチャルリアリティが社会に積極的に貢献する方法のひとつである。


4.医療分野におけるVRの活用


医学生や歯科学生は手術トレーニング等にVRを使用し始めている。VRによって、実際の患者を使って傷つけたりミスを犯したりするリスクを排除することで、医療事故を招くことなく学習する環境を可能にしている。学生は仮想患者を用いて、後に現実世界で適用することのできるスキルを磨く。


医療の世界でVR技術を用いることは、トレーニングで医学生を上達させる効果的な方法であるだけでなく、特に医療サービスが恒常的に厳しい予算状況に置かれるようになってからは、コストを最適化するという大きな機会も提供している。


5.教育分野におけるVRの活用


教育目的でのVRの使用は軍隊や医療の分野にとどまらず、学校にも広がり、教育の現場で採用されている。生徒は3D環境下で互いにやり取りをすることができる。


仮想の現地調査旅行に出かけることもでき、例えば美術館に出かけたり、ソーラーシステムを見学したり、別の時代に遡ったりすることもできる。バーチャルリアリティは自閉症のような特別な配慮が必要な生徒に特に有用である。


研究によれば、VRは自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供を含めた子供たちに、社会的なスキルを安全に学ぶ動機付けをするプラットフォームにもなり得る。


テクノロジー企業であるFloreo社は、指で指し示すこと、目を合わせること、社会的なつながりを構築すること等のスキルを学ばせ、練習させることのできるバーチャルリアリティのシナリオを開発した。親は接続したタブレットを用いてシナリオをたどったり、相互のやり取りを行ったりすることもできる。


6.ファッション分野でのVR


ファッション界でVRが使用されていることは余り知られていないが、実際には相当な影響力がある。例えば、店舗環境のバーチャルシミュレーションは、小売業者が現実世界ほどその構築に注力することなく、看板や商品ディスプレイの設計ができるという点で、極めて利用価値が高い。


同じく、店舗レイアウトの構築に割く時間と資源も適正化することができる。すでにビジネスにVRの導入を開始している有名ブランドの一例はトミーヒルフィガー、コーチ、ギャップである。こうしたビッグネーム企業では、VRを使ったファッションショーの360°体験、顧客用のバーチャル試着の提供等が行われている。


VR技術の今後、変化をもたらす業界


近い将来にVRの積極的な活用、導入が進むと予想される業界が「不動産業」、「観光業」である。不動産業ではコスモスイニシア社が、自宅に居ながらモデルルームを体験できる試験的サービスを開始している。観光業では、「じゃらん」が雑誌にHMDを添付し、著名観光地の360度映像を顧客へのアピールに活用している。


航空会社のJALも、自社航空機の座席の快適性をアピールするため、「YouTube」で機内の360度映像を発信している。2016年から始まったVRブーム当時のVR市場は29億ドル規模だったが、2020年現在では188憶ドルに増加し、2023年には1600億ドルに急成長すると予測されており、今後ますます多くの企業がVRの開発・活用に参入することが考えらえる。



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